顔がひきつる神経の病気の方がいます。
これが顔面神経麻痺です。
東洋医学による鍼灸治療
鍼灸治療は、化学薬品等によって攻撃的に病気と闘う現代医学とは異なり、人間が本来持っている自然治癒力(病気やけがを治そうとする力)を活性化し、ホメオスタシス(生体恒常性保持機能・体の状態を一定に保とうとする機能)を働かせることにより、病気の治療にあたるソフトな医療です。また、薬でよく言はれる副作用といったものがほとんど見られない、体にやさしい医療とも言えます。
副作用や痛みを伴うステロイド剤の点滴、星状神経節ブロック注射を使わずに顔面神経麻痺を治療することが可能です。
顔面神経麻痺の原因と病理は正気不足(ストレスや過労などにより免疫力が低下して、身体の抵抗力がなくなること)によって脈絡が空虚になり、外表を防衛できなくなるため風邪(熱、風、冷)が虚に乗じて顔面の支配をつかさどる主な脈絡に侵入して起こると考えられます。要するに不摂生、睡眠不足などが続いた場合に体が悲鳴をあげて、そのしわ寄せが顔面の神経・筋に悪影響を及ぼし、麻痺させてしまうということです。
鍼灸治療では身体の中に潜んでいる邪気を取り除き、経絡を活性化し、血気の通りをよくします。そうすることによって麻痺していた神経は徐々に回復してきます。
鍼灸を使うツボは手、足、顔など人によって様々ですが神経支配が失われた筋肉繊維に新たな神経支配をもたらし、それによって神経の働きが回復することが実証されております。
マッサージや鍼灸での刺激は血行を良くし、表情筋の強ばりを防ぐのに効果的です。また、首筋から肩にかけてコリが強い場合は同時に治療していくと心身ともにリラックスし、より効果があります。
鍼灸マッサージを使うことで治癒率を高め、短期間で回復させて後遺症を防ぐことができます。
通院頻度と予後
顔面神経麻痺の予後は発症日数に比例します。発症後の鍼灸治療が早ければ早いほど、回復速度も速く、後遺症などが残る確率は大変低くなります。また、治療と同時に十分養生することが発症して最初の4週間ではもっとも大事です。
できるだけ早く麻痺を取り、筋運動を再開させることが後遺症回避のためもっとも重要なファクターとなってきます。できるだけ早く麻痺が取れるよう私たちは全力で治療に取り組みます。
顔面麻痺は時間がたてばたつほど治すのに時間を要してしまいます。
ひとつは麻痺により筋肉が動かなくなるため顔面表情筋の筋力が低下してしまうこと。もうひとつは筋肉を使わないことによっておこる拘縮により筋肉は弱くなり、固まってしまうこと。
拘縮を起こさないよう、発症後はご自分でマッサージやリハビリ運動法に積極的に取り組むことも大事です。
顔面神経麻痺とは
顔面麻痺は文字通り顔を動かす表情筋へ信号送る神経が何らかの原因によって阻害され、顔の筋肉の動きが麻痺して(主に片方のみ)動かせないことをいいます。
顔面神経麻痺は主に中枢性と末梢性に分類されます。
中枢性顔面神経麻痺について
脳幹より上位の麻痺を中枢性顔面神経麻痺といい、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害によって起こります。
末梢性の麻痺に比べて著明な顔面麻痺はありませんが、顔面部以外にも片麻痺など四肢の神経症状を伴うことが多く、激しい頭痛や吐き気を伴うので、末梢性顔面麻痺との識別ができます。また、顔の麻痺も末梢性顔面神経麻痺でみられる麻痺側全体の麻痺と違って下半分(眉毛は動かせるが、口唇は動かせないもしくはシビレる)だけの部分的麻痺や話が上手くできないなど末梢性に見られない障害があります。
末梢性顔面神経麻痺について
顔面神経は左右の脳幹から内耳道、中耳腔を通って顔面に出る脳神経です。
顔面筋の運動や舌の味覚の一部、さらには涙腺、舌下腺などに分布する副交感神経などをつかさどる神経で、顔面神経麻痺とはこの神経が様々な原因で障害され、顔面機能が消失する病気です。障害部位が脳幹から遠いほど、麻痺は軽くなってきます。
顔面神経麻痺の主な後遺症
顔面神経麻痺の予後は、障害の程度や範囲、病因、治療法、治療開始時期などによって様々です。
臨床において最も頻度の高いベル麻痺(Bell’s Palsy)やラムゼイ・ハント症候群(Ramsay-Hunt Syndrome)などの場合は、神経障害が軽度であれば、適度な治療によりほとんど後遺症を残さず回復しますが、神経障害が重度の場合はしばしば後遺症を残します。
顔面神経麻痺の後遺症は色々ありますが、主な後遺症は下記の症状で神経の再生不良が原因です。
① 病的共同運動 (Synkinesis)
何らかの原因で、顔面神経が再生されるうえで神経が交差、又は本来と違う場所に再生してしまったために起こる障害です。顔面の運動神経は末端で6千本ぐらい細かく顔の隅々まで分布してますが、とても細かいがゆえに、ばらばらに再生することがあります。
② ワニの涙
食事などをする際、多量の涙が麻痺側の目からでます。ワニは食べ物を食べると涙が出るといわれてますので「ワニの涙」と呼んでます。これは唾液腺と涙腺を担当する神経が再生の過程で混同することによっておこります。
③ 顔面拘縮
麻痺側の顔面が、安静時も非対称に見え、顔面筋のこわばりが残ります。また、時によっては目の周りや顔面の筋肉が痙攣したりすることもあります。また、ストレスなどによって、治癒したはずの顔面が突如としてピクピク自分の意思と関係なく動くこともあります。
④ アブミ骨筋性耳鳴
一過性の難聴や耳鳴りが目を閉じたり、口を動かしたりした時に起こります。これは本来表情筋を動かす神経線維が誤ってアブミ骨筋(鼓膜に伝わってきた振動を増強して内耳に伝える筋肉)に再生したために発生します。
西洋医学ではどんな治療をするの?
顔面神経麻痺はほっておいても75%が自然に治ると言われています。早ければ数週間以内に治癒するものもあります。しかし、病状の程度や治療時期の加減で、予後に大きく影響することもあります。
現代医学ではまだ特効薬はなく、発症直後には、一般的に副腎皮質ステロイドや抗ウイルス剤の点滴、星状神経節ブロックなどを行い、改善されなければ、血流改善剤、ATP剤、ビタミン剤や神経賦活剤などの薬が処方されます。
現代医学で用いる顔面神経麻痺の治療は、まず第一に薬物療法が選択されます。特に発症直後には、連日(約2週間程度)点滴を行い、治療効果を高めます。治療薬としては、副腎皮質ホルモン、血流改善剤、ビタミン剤や神経賦活剤などが主として用いられます。また、点滴を行いながら混合ガス(二酸化炭素5%を混合した酸素ガス)を吸入し、顔面神経への血流の流れを改善させ、更に治療効果を高める方法もあります。
これらの治療で改善をみない例、あるいは陳旧性の顔面神経麻痺の場合、顔面神経管開放術などの手術的治療の対象となることもあります。
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