【症例紹介】胃下垂

治療

最近、調子が悪くて病院に行ったら、

胃下垂だと言われたんです。

西洋医学では治らないらしいですが、

多聞先生、どうすればいいでしょうか?

多聞先生
多聞先生

なるほど、暴飲暴食、早食い、偏食は
胃下垂の元になるようです。

東洋医学による鍼灸治療

東洋医学では、内臓一般の下垂症状を「気陥」という状態ととらえます。
「気」とは、人間のからだを動かしたり、温めたりと様々な働きがあり、人体の誕生から成長と発育、
各臓腑(臓:生命活動を支配している気を納めているところ 腑:飲食物の消化吸収に関与しているところ)や
経絡などの組織機関の生理活動、血や体内の水分を作ったり運ぶなどの働きは全て気の生理活動によるものです。

「気」の変調は原因によりいくつかに分類されます。その中に「気陥」という気の変調があります。それは先天的に気が不足している、飲食物の摂取不足により後天の精(人体を構成し、生理機能を営み、外邪から身体を防衛するもの)が補充されない、心身の過労などにより気の生成不足、消耗過多などにより「気虚」という気の不足した状態になり、臓腑機能の低下を招きます。
とくに「脾※」というところの生理機能である「昇清」が悪くなると内臓の下垂を起こしてしまいます。この昇清が低下した病態を「気陥」または「中気下陥(脾気下陥)」といわれます。

※脾は、飲食物から気・血・津液を作り出すためにとても重要な働きをするとともに、血が漏れ出すのを防ぎ、内臓の位置を保つ働きをしているところです。中でも「昇清」という作用は、臓腑・器官の固有の位置を維持する働きがあります。また、小腸から受け取った栄養を吸収し、肺に持ち上げ送る働きを有します。これを「脾は昇清を司る」といいます。

この働きが失調すると、腹部の下垂・脱肛・めまい・ふらつきなどの症状があらわれます。
「中気下陥」とは脾気虚の進行した状態で、脾の「昇清作用」が失調して下垂症状をおこすと考えられ、胃下垂もこの「中気下陥」と表現します。
「中気」とは、人体の真ん中にあり、おもに飲食物の消化・吸収をつかさどる「脾」の気を指します。
「下陥」とは字の通り、下に陥ちる、下がるということです。
脾気が下がる(上がらない)=胃下垂ととらえるのです。

鍼灸治療では、お腹や背中、手足、頭など人によって使うツボは様々ですが、脾や胃の機能を改善させ体力を補い元気をつけます。また、全身の気を持ち上げ下陥した清陽を昇らせます。
具体的には、胃経の募穴と合穴である「中脘」「足三里」を使って脾や胃の機能を改善させたり、全体の体力を補うために「気海」「関元」、全身の気を持ち上げるために「百会」を使って治療していきます。

また、日常生活の見直しが必要な場合もあります。
生ものや甘いものはからだの中に「湿」を溜め込む性質があります。「湿」は体内でもベトベトと粘着性を持つので、清陽が上に昇るのを邪魔して、結果 、脾気の機能低下を招いてしまいます。

胃下垂とは?

胃下垂とはその名の通り、胃が下に垂れ下がっている状態のことを言います。
胃の位置が正常であれば正面から見て大体みぞおち辺りに位置するのですが、胃下垂の人は程度によってへそや下腹部の辺りまで下がってきてしまいます。基本的に胃の上部の位置は変わらないので、胃の下部が伸びている状態です。

高身長で痩せ型の方に多いのが特徴ですが、それ以外の方でもなります。

胃を引き上げる筋力が弱くなって起こることや、ストレスなどの要因で胃の消化不良が消化物を残留させて起こることがあります。

暴飲暴食も原因のひとつでしょう。

胃下垂になると、ひどい場合は慢性的な消化不良に陥り、栄養失調になってしまうこともあります。
消化力も正常な胃と比べて、下手をすると3分の1程度まで下がってしまいます。胃の不調が続くことにより、胃炎や胃潰瘍を併発する恐れもあります。

西洋医学ではどんな治療をするの?

胃下垂はどうやったら治るのでしょうか?
実はそう簡単に治る病気ではありません。

外科手術で胃下垂を治す方法もあります。
胃を吊り上げるのですが、現在ではこの手術をすることはほとんどなくなってきています。
「腹筋を鍛えることで胃下垂は治る」
という情報が飛び交っていますが、残念ながらそれだけで治ることは少ないようです。
また、妊娠を機に治ったという人も居ますが、治療法と言えるわけではありません。
姿勢の悪さ、骨盤の歪みから来る胃下垂であれば、骨盤矯正で全身のバランスを整えてゆくことは改善に効果的です。

さらに暴飲暴食、早食い、偏食は胃下垂の元となります。
よく噛んで食べることで胃に負担をかけないようにし、栄養はバランスよく摂るように心がけることが必要です。
そして適度な運動で体を鍛えて、規則正しい生活を送ることも大切です。
やはり健康的な生活が体にとっては一番の薬だというわけです。
とは言うものの仕事の都合上、不規則な食事、ストレス、付き合いなどで、わかってはいるがなかなか実行できないのが健康的な生活です。

それぞれの原因を追究し、お一人お一人に適した治療計画を提案しています。

多聞先生
多聞先生

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